「個人情報保護委員会VS政治団体オープンサイエンス」その1 破産者情報サイト停止命令

投稿者: | 2022年3月23日

個人情報保護委員会が本日(2022年3月23日)、破産者情報サイトに対し「停止命令」を行いました。停止命令の対象となったサイトは、破産者情報通知サービスです。3月30日までに命令に応じない場合は、運営者を刑事告発を検討するようです。

破産者情報通知サービスは、政治団体オープンサイエンスが運営しております。

この件について、多数の新聞報道やメディアで報じられておりますので、受け止めについてお話したいと思います。さきほど、時事通信様の記者さんとお話しました。運営者のコメントが掲載されましたが、運営者である政治団体オープンサイエンスに取材し、記事にしている新聞社は、ほとんどありません。個人情報保護委員会が、各社の政治部に配ったブリーフをそのまま記事にして、報じているようです。

まず気になった点からお話したいと思います。それは、政治団体オープンサイエンスが、あたかも削除手数料を破産者に要求しているかのような報道です。23日の夕方に「事業者は破産者がサイトからの情報削除を求めた場合、手数料を要求している」との偽りの情報を、個人情報保護委員会が各社の政治部に流したことが発端になっているようですが、政治団体オープンサイエンスは「官報に公告された情報を、国民に正確に伝えること」を信念にしておりますので、これまで一度も情報を削除したことはありません。法令の定めや、裁判所の決定があれば従いますが、破産者や弁護士等からの削除要請に対しては、削除をしたことはありません。削除手数料を求めたこともありません。破産者情報通知サービスは、有料会員様の会費で運営しております。

次に、個人情報保護委員会による行政命令で、納得できないところがあります。それについて触れたいと思います。破産者情報通知サービスは、政治団体オープンサイエンスが運営しているとお伝えしました。政治団体オープンサイエンスは、政治資金規正法に基づき、神奈川県選挙管理委員会に届けられた政治団体です。政治団体である事実は、神奈川県選挙管理委員会のインターネットサイトで告示されています。

他方、個人情報保護委員会は、個人情報保護法第23条に違反しているとして、サイトを停止するよう行政命令を行いました。政治団体オープンサイエンスは、個人情報保護法第23条には違反していないと考えています。それは、個人情報保護法第76条「「政治団体」に対し「第四章の規定は適応しない」」との規定によるものです。第四章は、第15条~第58条の範囲です。個人情報保護法第23条は第四章の範囲、つまり政治団体オープンサイエンスは、個人情報保護法第23条が適応されません。しかし、個人情報保護委員会は、政治団体オープンサイエンスに、本来適応できない個人情報保護法第23条を適応しています。

個人情報保護委員会からの文書には「政治団体オープンサイエンスは、政治資金規正法の規定に基づく政治団体設立届けを提出しているが、個人情報保護法第76条第1項第5号にいう「政治団体」には該当しないので、適用除外の対象とはならない」とだけ書いてあります。政治資金規正法に基づき、選挙管理委員会に届けられた政治団体が、個人情報保護法上の政治団体ではないとする、個人情報保護委員会の主張が、よくわかりません。個人情報保護委員会が発表しているガイドラインをみると、政治資金規正法上の政治団体よりも、個人情報保護法上の政治団体は広く解釈されているので、政治資金規正法上の政治団体が、個人情報保護法上の政治団体ではないというのは、理解に苦しみます。

今回、行われた行政命令は、個人情報保護法第42条に基づくものですが、これも第四章の範囲です。個人情報保護法第76条の規定に基づき、政治団体に対しては、個人情報保護法第42条の行政命令を出せないとの規定になっているのですが、個人情報保護委員会は、政治団体オープンサイエンスに行政命令を行っています。理解に苦しみます。政治団体オープンサイエンスは、個人情報保護法第76条でいうところの「政治団体」として扱われてはいないようです。

個人情報保護委員会は、破産者情報通知サービスにサイト停止命令を出しましたが、破産者情報通知サービスの情報は全て「官報」という内閣府が出している日本国の雑誌に掲載されている情報で、国民はその情報を知っているとされる情報です。なぜ、広く入手可能で、国民全員が知っているとされ、明治以来その情報は消えず、閲覧時間、閲覧場所、閲覧手段(紙、インターネット等)の制限がない情報を、個人情報保護の名の下に、国が規制する必要があるのでしょうか? 官報に掲載されている個人情報は、個人情報保護法の規制対象から外すべき個人情報だと思います。

官報の情報を知らないという主張や、官報の情報を知らなかった主張を、国や裁判所は認めていない以上、官報に掲載されている情報の流通を国が妨げ、官報に掲載されている情報を知らない国民を増やすことは、あるべき国の姿なのでしょうか?

官報に掲載された情報は、公益性、公共性が高い情報です。言い換えれば、公益性や公共性が高い情報だからこそ官報に掲載されるわけで、掲載された情報は、国民の正当な関心の対象であるといえます。なぜそのような情報を、個人情報保護委員会は、規制をしようとしているのでしょうか? 官報は内閣府が発行しています。一方、個人情報保護委員会は、内閣府の外局です。同じ内閣府が破産者情報を広め、同じ内閣府が破産者情報を広めまいと頑張る。国として、破産者情報を広めるのか、規制をするのか、同じ内閣府の中で調整して欲しいと思います。

個人情報保護委員会は「破産者情報通知サービスを通じ、不特定多数人に容易に検索できる方法で継続的に提供されており、多数の破産者等が人格的・財産的な差別的取り扱いを受ける恐れがある」と主張しています。官報に掲載された情報を、不特定多数の国民が容易に検索できることは、官報に掲載された情報を国民が知るのによいことであり、むしろ、国が率先して行うことなのではないでしょうか?

個人情報保護委員会がいうように、情報により、多数の破産者が人格的・財産的な差別的取り扱いを受ける恐れがあるのであれば、破産者を官報に公告すると定めている破産法第10条を改正し、多数の破産者が人格的・財産的な差別的取り扱いを受ける恐れがある情報を、官報に掲載するのをやめる、もしくは、閲覧手段や閲覧期間等の制限をすることが必要なのではないでしょうか?

現在、国立印刷局が有料で「官報情報検索サービス」を行っていますが、官報の情報を知らず、権利を行使できず、義務を果たすことのできない国民を1人でも減らすため、国が、国家事業として、無料で行うべきではないでしょうか? 国がそうしないので、小さな政治団体が、情報提供サイトを運営していますが、本来、小さな政治団体がやる仕事ではないように思います。

他にも、伝えたいことがありますが、今回はここまで

「個人情報保護委員会VS政治団体オープンサイエンス」その1 破産者情報サイト停止命令」への3件のフィードバック

  1. 匿名

    官報の目的は、政府が国民に広く知らせるため。
    その考えでいけば、このサイトは本来、政府自身が作らないといけないものなのでは?

    法治国家なんだから、ちゃんと法的根拠に基づいて行動して欲しい。

    個人情報保護委員会は、官報で広く知らせようとした政府も刑事告訴するのかな?

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  2. 匿名

    そもそも官報いつでも見れるけどね。
    官報にも停止命令出さないと整合性取れないね。

    返信
  3. 匿名

    これもともと官報に掲載された情報なんでしょ、情報公開したのは国じゃないの。

    返信

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