おもしろそうな書籍が2022年6月14日に、弘文堂から発売されるようです。タイトルは「AI・データ倫理の教科書」です。書店で予約をしようと思いましたが、まだ予約を受け付けていません。西村あさひ法律事務所の弁護士、福岡真之介さんが書かれたようです。
社会で受け入れられるAIの作り方を徹底分析!
リクナビ事件、Yahoo!スコア事件、破産者マップ事件、AIチャットボットや顔認識技術――。 深層学習などのAI技術の発展により、AIが社会の様々な場面で用いられるようになりました。同時に、AIの普及に伴って社会問題が生じ、AIを使った製品・サービスに対して、法律には違反しないものの、倫理的に問題があるとして、社会から厳しい批判がされるケースも増えています。
これらの問題に対応するため、日本や諸外国の政府や民間団体は活発な議論を行い、AI倫理原則を定めています。
本書ではこれらのAI倫理原則を体系化して、AIとデータに関する倫理(AI倫理)の基本的な考え方と実際の事例を整理します。実際の失敗事例を数多く検討することで、同じような失敗を避けることにもつながります。
ソニー、日本マイクロソフト、メルカリ、富士通の担当者の方による取組みの紹介など、AIを使った製品・サービスを社会に提供する企業の方も必読です。
弘文堂、https://www.koubundou.co.jp/book/b605197.html
「深層学習」「AI」という単語を見るだけで、興味がわいてきます。書籍の目次をみると「第3章 AI・データ倫理が問題となった事例」が目にはいります。この書籍で「破産者マップ事件」を扱うとすれば、第3章の「Ⅳ プライバシーの尊重」のところで扱う可能性が高そうです。著者の福岡真之介さんが、どのような切り口で、破産者マップ事件を見ているのか、注目です。
「破産者マップ」は、AIや深層学習といった数理的、統計的なプログラムは実装されておらず、国民に広く公告されている官報に掲載されている破産者の住所や名前を、地図上に視覚化を行っただけにとどまりますので、この本のキャッチコピーにある「社会で受け入れられるAIの作り方を徹底分析」の「AI」に「破産者マップ」が対象になるかといえば、ならないように思います。
国会で可決された「法に基づき」、国家が官報に破産者の氏名や住所を掲載しています。国家が国民に広く知らせている情報の形が「文字列」から「座標」に変わっただけで、プライバシー権の侵害が生じ、倫理的な問題が発生するのでしょうか? 「破産者マップ」が、プライバシー権や名誉権の侵害だという人がいますが、もともと日本国により、破産者の氏名や住所は広く公告されており、破産法第51条により、国民は破産者の住所や名前を知っているものとされますから、もしプライバシー権や名誉権の侵害ということを主張するのであれば、「破産者マップ」と「官報公告」による「差分」に焦点をあて、権利侵害を論じる必要があると考えます。
東京地方裁判所で破産者マップ裁判が行われていますが、原告代理人の主張は、他の多くの弁護士と同じように、原告2名は、破産者マップに掲載されていたから、「プライバシー権」「名誉権」の侵害だと主張しています。すでに広く公告されている官報との「差分」に注目して主張しているわけではありません。破産者の住所氏名について、破産法第51条の規定で、国民が広く知っているしているにもかかわらず、「プライバシー権」が侵害されたとか、「名誉」が毀損されたと主張する原告代理人の主張は、合理性を欠いているように思います。もし破産者のプライバシー権や名誉権について、原告代理人が真剣に考えているのであれば、官報を発行している「独立行政法人国立印刷局」か、内閣府(裁判上は法務大臣を訴えることになる)を訴え、官報に破産者の氏名や住所を掲載しないよう求めるか、閲覧期間や閲覧手段に制限をかけるよう求めるべきだと思います。
今日はここまで