ニュースの誤報とメディアの対応

投稿者: | 2022年4月14日

2022年3月23日「破産者情報サイトに停止命令」をだしたとのニュースが、各種メディアで報じられた。このニュースを報じたのは、日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経クロステック、時事ニュース、ITメディアニュース等である。今回、報じられた内容や、メディアとのやりとりについて、触れたいと思う。

今回、政治団体オープンサイエンスが運営する「破産者情報通知サービス」が、個人情報保護委員会からサービスの停止命令を受けた。記事に誤りが2点ある。この点をまず指摘したい。

誤報の1つ目「削除手数料を求めていた」との報道だ。「破産者情報通知サービス」は、削除手数料を請求もしていないし、受け取ってもいない。個人情報保護法で徴収が認められている手数料は2つ。利用目的の通知手数料と、保有個人データ開示請求手数料である。政治団体オープンサイエンスは、これら2つの手数料も受け取っていない。これらの事実は「破産者情報通知サービス」のサイトを見ればわかることである。「削除手数料を求めていた」と報じた各メディアに対し「削除手数料を求めた根拠」を質問すると、個人情報保護委員会がそのように言っていたという。私が個人情報保護委員会に確認をすると「個人情報保護委員会のサイトにある発表に書いている通り」だという。個人情報保護委員会のサイトを見ると、破産者情報サイトに対して命令を出したことは書いているが、削除手数料の話は一切書かれていない。個人情報保護委員会は、大手メディアに対し、ありもしない「削除手数料」の話をし、ブリーフを配っていたという。

次に「削除手数料を請求していた」との裏付け取材は行ったのか?と尋ねると「裏付けはとっていない。個人情報保護委員会は国の組織なので、国のいうがまま報じた」という。「国がいうことなんだから、間違うはずがない」とまで言い切ったメディアもあった。私は、各メディアに対し、誤報の訂正ないし、両論併記を行うよう申し入れを行った。そして各メディアの取材を受けた。朝日新聞、毎日新聞、時事ニュースについては、各メディアの興味や関心により、切り取られ方が異なるものの、私の意見や見解として、私の発言が掲載された。

誤報の2つ目「破産者情報通知サービスは違法である」との報道だ。個人情報保護委員会は「破産者情報通知サービス」を違法であると考えているからこそ、サービス停止命令を出したのだろうが、本当に違法なのだろうか? 答えは、違法な点はない。

私は、各メディアの記者に対し、具体的に違法な点を質問したところ「個人情報保護委員会が違法と発表している」「個人情報保護法に違反していると個人情報保護委員会の担当者がいっていた」と、具体的にどこが違法なのかを、各メディアは説明ができなかった。「私は個人情報保護関係の取材を専門に行っている」「私は個人情報保護法の専門家に対し取材を何回も行っている」と自信たっぷりお話をされる記者の方もいたが、いくつか基本的な質問をするだけで、その記者が、全く個人情報保護法について勉強していないことがわかる。

「破産者情報通知サービスは、政治資金規正法に基づき届出た政治団体が運営しているが、その政治団体に対し、個人情報保護法の勧告や命令を行うことができるのか?」と、記者に尋ねた。「できる」と答えたものの、その法的な根拠を論理立てて話すことができた記者は1人もいなかった。私が記者に対し、個人情報保護法第76条第1項第5号の規定で「政治団体は、勧告や命令を受けない規定になっている」と伝えても、どの記者も、私がいっていることが理解できないようだった。これは無理もないことだと思っている。過去に取材を受けた経験から、よく勉強されている記者の方もまれにいるが、9割の記者は、その分野の新書を1冊読めば分かる程度の知識すらないことが多い。

個人情報保護法にいたっては、弁護士ですらひどい状況だ。過去に全国の弁護士から「破産者情報通知サービス」に対する様々なクレームを受け、電話や面会で延べ数百人の弁護士と話をしてきた。彼らは「個人情報保護法」という言葉は知っているようだが、具体的に「個人情報保護法のどの部分に違反しているのか?」と尋ねると、ただの1人も、答えられた弁護士はいなかった。

弁護士の先生達の名誉のためにいえば、弁護士でも、個人情報保護法に精通している弁護士はいる。個人情報保護法をよく知ってるだけに、クレームをつけてこないのだと思う。メディアによく、破産者サイトに対する弁護士コメントが掲載される。メディアのコメントや発表されている文章を見る限り、長谷川法律事務所の大島義則弁護士、ひかり総合法律事務所の板倉陽一郎弁護士は、個人情報保護法を熟知している弁護士だと思う。その他、個人情報保護法を熟知している弁護士が数名はいる。そのような弁護士はとても少ない。

個人情報保護法を全く勉強していないのにもかかわらず、よほど仕事がないのか、個人情報保護法について「よく知ってます」といったような顔をして、メディアにコメントを発表をする弁護士がいる。その中には「個人情報保護士」を持っていると標榜する弁護士もいる。たった1行のコメントでも、勉強している人間か、勉強してない人間かは、分かる。そういった偽物は、すぐにメッキがはがれるのか、1度メディアにでるものの、2度と見かけることはない。弁護士ですら、そのような状況なので、個人情報保護法について記者が不勉強なのは、仕方ないといえる。

最後に、「破産者情報通知サービス」に対する停止命令を「報じていない」メディアについて、触れたいと思う。日本放送協会(NHK)、読売新聞、産経新聞は、一切、破産者情報通知サービスについて触れていない。過去に、破産者情報サイトについてメディアが何度かとりあげたことがあったが、傾向は全く同じだ。日本放送協会(NHK)、読売新聞、産経新聞は、なぜ、「破産者情報通知サービス」に対する停止命令を報じないのだろうか?

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